神奈川の最低賃金1,279円へ―誰の給与をどう確認するか

2026年度の最低賃金の引上げが決まりました。神奈川県と東京都は、次のとおりです。
- 神奈川県 1,225円 → 1,279円(54円の引上げ・2026年10月1日発効)
- 東京都 1,226円 → 1,280円(54円の引上げ)
神奈川県は、2026年8月27日に改正が決定し、8月31日の官報公示を経て10月1日から発効します。東京都は8月5日に審議会からの答申が出た段階で、正式な決定と発効日はこれから公表されます(例年10月上旬です)。
最低賃金というと、「パート・アルバイトの時給を確認すれば大丈夫」と思われるかもしれません。しかし、最低賃金は月給制の従業員にも適用されます。
人事・総務のご担当者が、改定前に確認しておきたいポイントを整理します。
1. まずは自社に適用される最低賃金を確認しましょう
地域別最低賃金は、都道府県ごとに定められています。適用されるのは、会社の本社がある場所ではなく、従業員が実際に働いている事業場の所在地の最低賃金です。
たとえば、本社が神奈川県にあり、東京都にも事業場がある会社では、それぞれの事業場について適用される最低賃金を確認する必要があります。発効日も都道府県によって異なることがありますので、あわせてご確認ください。
次の2点も、見落としやすいところです。
- 派遣社員は、派遣先の事業場の最低賃金が適用されます(最低賃金法第13条)。派遣元の会社の所在地ではありません
- 業種によっては、地域別最低賃金より高い特定(産業別)最低賃金が定められている場合があります。その場合は、高いほうが適用されます
2. パート・アルバイトの時給を確認しましょう
時給制の場合は、確認は比較的簡単です。現在の時給が、新しい最低賃金以上になっているかを見ます。
たとえば神奈川県で時給1,250円のパート従業員がいる場合、現在は最低賃金(1,225円)を上回っていますが、10月1日以降は1,279円を下回ります。
最低賃金ぎりぎりの時給を設定している従業員については、特にご注意ください。
3. 月給制の従業員も確認が必要です
見落としやすいのが、月給制の従業員です。最低賃金は、時給制の従業員だけに適用されるものではありません。
月給制の場合は、次のように1時間あたりの金額に換算して確認します。
最低賃金の対象となる月給 ÷ 1か月平均所定労働時間
たとえば、最低賃金の対象となる月給が210,000円、1か月平均所定労働時間が170時間の場合は、次のようになります。
210,000円 ÷ 170時間 = 約1,235円
この場合、10月1日以降の神奈川県の最低賃金1,279円を下回ることになります。「月給だから大丈夫」と考えず、給与額が低めの従業員については一度確認しておきましょう。
4. すべての手当を計算に入れられるわけではありません
月給制の従業員について確認するときは、手当の取扱いにも注意が必要です。次のようなものは、最低賃金を確認する際の賃金には含めません(最低賃金法第4条第3項、最低賃金法施行規則第1条)。
- 通勤手当
- 家族手当
- 精皆勤手当
- 時間外労働・休日労働・深夜労働の割増賃金
- 賞与など、1か月を超える期間ごとに支払われる賃金
- 臨時に支払われる賃金(結婚手当など)
そのため、「総支給額では最低賃金を上回っているから大丈夫」とは限りません。給与明細の総支給額だけを見るのではなく、最低賃金の計算に含める賃金だけを取り出して確認する必要があります。
5. 扶養内で働いている従業員にも影響することがあります
最低賃金が上がれば、同じ時間だけ働いていても給与は増えます。そのため、扶養の範囲内で働くことを希望している従業員については、現在の勤務時間のままでよいか、確認が必要になる場合があります。
本人が想定していなかった形で収入が増えると、あとから「話が違う」となりかねません。シフトを決める前にお伝えしておくと、余計な行き違いを防げます。
扶養と最低賃金の関係については、最低賃金が上がると、扶養内パートの働ける時間はどうなるで詳しくご説明しています。
もし下回っていた場合はどうなるのか
最低賃金を下回る金額で合意していたとしても、その部分は法律上無効となり、最低賃金と同じ額で契約したものとみなされます(最低賃金法第4条第2項)。つまり、差額を支払う義務が残ります。地域別最低賃金を下回った場合には、罰則(50万円以下の罰金)も定められています(同法第40条)。
「知らなかった」では済まない部分ですので、10月を迎える前の確認をおすすめします。
改定前に確認しておきたいこと
- パート・アルバイトの現在の時給
- 給与額が低めの月給制の従業員(1時間あたりに換算して確認)
- 最低賃金の計算に含めている手当
- 複数の都道府県に事業場がある場合は、それぞれの最低賃金
- 派遣社員を受け入れている場合は、自社(派遣先)の最低賃金
- 扶養内で働いている従業員への影響
最低賃金の引上げは、パート・アルバイトの「時給を変更する」だけで終わらない場合があります。まずは対象となりそうな従業員を洗い出し、改定前に確認しておきましょう。
10月にはこのほかにも制度の変更が重なります。全体像は2026年10月から何が変わる?確認したい5つのポイントでご説明しています。
毎月の給与計算をお任せいただく給与計算サービスでは、こうした改定への対応も含めて対応しています。「自社の従業員が対象になるか確認したい」といったご相談は、労務顧問として継続的にお受けしています。初回のご相談は無料・予約制です。お気軽にお問い合わせください。
参考資料
- 神奈川労働局「令和8年度『神奈川県最低賃金』を改正決定します」(令和8年8月27日)
- 神奈川労働局「神奈川県最低賃金額54円の引上げへ」(令和8年8月4日答申)
- 東京労働局「東京都最低賃金の54円引上げを答申」(令和8年8月5日)
- 厚生労働省「令和8年度地域別最低賃金額改定の目安について」
- 厚生労働省「地域別最低賃金の全国一覧」
※本記事は令和8年8月29日時点の情報をもとにした一般的な説明です。東京都の最低賃金額および発効日は、正式決定後に最新の情報をご確認ください。実際の取扱いは個別の事情によって異なりますので、判断に迷われる場合は当事務所、または所轄の労働基準監督署・都道府県労働局にご相談ください。










