2026年10月から何が変わる?確認したい5つのポイント

2026年10月から、人事・労務に関するいくつかの制度が変わります。
「法改正があることは聞いたけれど、結局、会社では何をすればいいの?」——そんな人事・総務のご担当者に向けて、まず確認しておきたいポイントを5つにまとめました。
この記事は全体像をつかんでいただくためのものです。それぞれの詳しい内容は、今後の記事で順にご説明します。
1. 最低賃金が10月から上がります
2026年度の最低賃金は、各都道府県で改定額の審議が進み、順次決定されています。神奈川県は時間額1,279円(現在の1,225円から54円の引上げ)で正式に決定し、2026年10月1日から発効します。
最低賃金というと、時給で働くパート・アルバイトだけの問題と思われがちですが、月給制の従業員も対象です。月給を1時間あたりの金額に換算して、最低賃金を下回っていないか確認する必要があります。
また、最低賃金が上がると、扶養の範囲内で働きたい従業員は、同じ収入におさめるために勤務時間を減らす必要が出てきます。シフトの組み方に影響しますので、早めに確認しておくと慌てずに済みます。
会社で確認しておきたいこと
- パート・アルバイトの時給が、10月以降も最低賃金を上回っているか
- 給与額が低めの月給制の従業員について、1時間あたりに換算した金額
- 扶養内で働いている従業員の勤務時間への影響
最低賃金は、本社のある場所ではなく、従業員が実際に働いている事業場の所在地の都道府県のものが適用されます。発効日も都道府県によって異なりますので、複数の都道府県に事業場がある会社は、それぞれご確認ください。
誰の給与をどのように確認すればよいかは、神奈川の最低賃金1,279円へ―誰の給与をどう確認するかで詳しくご説明しています。
2. パート・有期契約社員に関するルールが変わります
2026年10月1日から、パートタイム・有期雇用労働者に関するルールが改正されます。今回変わるのは、主に次の3点です。
- 雇い入れ時に明示する労働条件の項目が追加される(省令の改正)
- 「同一労働同一賃金ガイドライン」が改正される(告示の改正)
- 雇用管理の改善等に関する措置の指針が改正される(告示の改正)
1つ目は、パート・有期契約社員を雇い入れるときに、「待遇の相違の内容・理由等について説明を求めることができる」旨を明示することが必要になるものです。労働条件通知書や雇用契約書の様式を見直す必要があります。
2つ目のガイドラインの改正では、裁判例を踏まえて、賞与・退職手当・各種手当・福利厚生についての考え方がより具体的に示されました。たとえば家族手当については、相応に継続的な勤務が見込まれるパート・有期契約社員に対しても、正社員と同一の手当を支給しなければならないとされています。
正社員とパート・有期契約社員で、賞与、退職金、各種手当、休暇などの待遇に違いがある会社は、一度確認しておきたいところです。
会社で確認しておきたいこと
- 正社員とパート・有期契約社員の待遇に、どのような違いがあるか
- その違いを、待遇の性質や目的に照らして説明できるか
- 労働条件通知書・雇用契約書の様式を変更する必要がないか
まずは正社員とパート・有期契約社員の待遇を一覧にして、違いを「見える化」するところから始めてみましょう。
改正の内容と、会社が確認すべきことは、同一労働同一賃金の改正―10月までに会社が確認することで詳しくご説明しています。
3. カスタマーハラスメント対策が義務になります
2026年10月1日から、カスタマーハラスメント対策が会社の義務になります(改正労働施策総合推進法・令和7年法律第63号)。パワーハラスメントのときのような中小企業の猶予期間はなく、会社の規模にかかわらず同じ日から義務となります。
法律上のカスタマーハラスメントは、次の3つをすべて満たすものとされています。
- 顧客等の言動であること
- 従業員が従事する業務の性質などに照らして、社会通念上許容される範囲を超えていること
- 従業員の就業環境が害されるものであること
つまり、お客様からのご指摘のすべてが対象になるわけではありません。正当な要望と、許容される範囲を超えた言動を分けて考えることになります。
求められているのは、従業員ひとりに対応を任せるのではなく、会社として対応する体制を整えることです。具体的な内容は、令和8年厚生労働省告示第51号の指針に示されています。
会社で確認しておきたいこと
- カスタマーハラスメントに対する会社の方針を決め、明確にすること
- その方針を従業員に周知すること
- 相談を受けられる窓口を決めておくこと
- 実際に起きた場合の対応の手順を決めておくこと
接客業だけの問題ではありません。取引先などからの著しい迷惑行為も対象となり得るため、幅広い会社で確認が必要です。ハラスメント対策の考え方については、横浜市長のパワハラ問題から考える会社のハラスメント対策でもご説明しています。
会社が準備すべきことは、2026年10月からカスハラ対策が義務に―会社が準備することで詳しくご説明しています。
4. 採用活動中のセクシュアルハラスメント対策も義務になります
同じく2026年10月1日から、求職者等に対するセクシュアルハラスメントを防止するための措置も、会社の義務になります(男女雇用機会均等法の改正。指針は令和8年厚生労働省告示第52号)。
採用面接やインターンシップなど、まだ従業員になっていない方に対するハラスメントについても、会社として防止策を講じる必要があります。
会社で確認しておきたいこと
- 採用担当者・面接担当者への周知
- 求職者等から相談を受けられる体制
- 問題が発生した場合の対応方法
採用面接は、担当者と応募者だけで行われることも多く、会社として把握しにくい場面です。採用活動を行っている会社では、現在の採用の流れとあわせて確認しておきましょう。
会社が準備すべきことは、10月から就活セクハラ対策が義務に―採用活動で確認することで詳しくご説明しています。
5. 短時間労働者の社会保険「月額8.8万円以上」の要件が撤廃される予定です
短時間労働者が健康保険・厚生年金保険に加入する要件の一つである「所定内賃金が月額8.8万円以上」という賃金要件が、2026年10月に撤廃される予定です。最低賃金の上昇により、週20時間以上働く方はこの金額を自然に超えるようになったためです。
ここで注意していただきたいのは、これによって加入対象が広がるのは、厚生年金保険の被保険者数が51人以上の企業だという点です。2026年10月の時点では、会社の規模の要件(51人以上)は残ります。50人以下の会社では、今回の改正で加入対象が変わることはありません(規模の要件は、2027年10月から36人以上へと段階的に広がる予定です)。
社会保険の加入要件は、賃金だけではありません。週の所定労働時間、雇用期間の見込み、学生かどうかなど、他の要件もあわせて確認する必要があります。
会社で確認しておきたいこと
- 自社が企業規模の要件(51人以上)に当てはまるか
- 当てはまる場合、週20時間以上働くパート・アルバイトが何人いるか
- 対象になる方への事前の説明(保険料の負担が生じ、手取りが変わります)
加入の手続きが漏れやすい場面については、社会保険の手続きが漏れやすい場面 — 「うっかり」が起きやすい6つのタイミングでご説明しています。
賃金要件の撤廃で何が変わるのかは、2026年10月、106万円の壁はどうなる―8.8万円要件の撤廃で詳しくご説明しています。
まずは「自社に関係するもの」から確認しましょう
2026年10月は、人事・総務のご担当者が確認しておきたい変更が重なります。すべてを一度に詳しく理解する必要はありません。まずは、次の5点について、自社の現在の状況を確認するところから始めてみてください。
- 最低賃金(10月以降の時給・月給の確認)
- パート・有期契約社員の待遇と労働条件通知書
- カスタマーハラスメント対策
- 採用活動におけるハラスメント対策
- パート・アルバイトの社会保険の加入
それぞれについて「会社では具体的に何をすればよいのか」は、個別の記事でご説明しています。
2026年10月の法改正シリーズ(全8回)
- 2026年10月から何が変わる?確認したい5つのポイント(この記事)
- 神奈川の最低賃金1,279円へ―誰の給与をどう確認するか
- 最低賃金が上がると、扶養内パートの働ける時間はどうなる
- 同一労働同一賃金の改正―10月までに会社が確認すること
- 2026年10月からカスハラ対策が義務に―会社が準備すること
- カスハラ対策で10月までに用意する5つのもの【実務編】
- 10月から就活セクハラ対策が義務に―採用活動で確認すること
- 2026年10月、106万円の壁はどうなる―8.8万円要件の撤廃
就業規則やハラスメント防止規程の見直しは就業規則の作成・見直しで、相談体制や社内の運用の点検は労務リスク点検パックでお手伝いしています。「自社は何から手をつければよいか」といったご相談は、労務顧問として継続的にお受けしています。初回のご相談は無料・予約制です。お気軽にお問い合わせください。
参考資料
- 神奈川労働局「令和8年度『神奈川県最低賃金』を改正決定します」(令和8年8月27日)
- 厚生労働省「2026年10月からパートタイム・有期雇用のルールが変わります―3つの改正ポイント」
- 厚生労働省「同一労働同一賃金特集ページ」
- 厚生労働省「令和7年労働施策総合推進法等の一部改正について」
- 厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために」
- 厚生労働省「社会保険の加入対象の拡大について」
- 日本年金機構「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大」
※本記事は令和8年8月29日時点の情報をもとにした一般的な説明です。実際の取扱いは個別の事情によって異なりますので、判断に迷われる場合は当事務所、または所轄の都道府県労働局・年金事務所にご相談ください。










