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横浜市長のパワハラ問題から考える会社のハラスメント対策

机の上の書類を挟んで話し合う二人

2026年7月30日、横浜市は、市長の職員に対する言動について行われた第三者調査の報告書を公表しました。

報告書では、怒鳴る、職員を侮辱するような発言をする、人事権を背景に心理的に圧迫するなど、複数の言動について調査が行われています。すべての申告内容が事実と認定されたわけではありませんが、第三者委員会は、認定された一連の言動について、職員の尊厳を傷つけ、職場環境を悪化させる重大なパワーハラスメントがあったと結論づけています。

この事例は行政組織で起きたものですが、会社のハラスメント対策を考えるうえでも参考になる点があります。

1. 会社には、どのような対策が求められているのか

ハラスメント対策は、会社の努力目標ではなく法律上の義務です。労働施策総合推進法第30条の2により、事業主は職場のパワーハラスメントを防ぐために必要な措置を講じなければならないとされています。中小企業も、令和4年4月1日から義務の対象です。

厚生労働省は、事業主が講ずべき措置として、主に次のような内容を求めています。

  • ハラスメントを禁止する方針を明確にし、従業員に周知すること
  • 相談に対応できる体制を整備すること
  • 問題が発生した場合、事実関係を迅速かつ正確に確認し、適切に対応すること
  • 相談者等のプライバシーを保護し、相談を理由とした不利益な取扱いをしないこと

つまり、「就業規則に禁止と書いてある」「相談窓口を決めてある」だけでは十分ではありません。実際に相談があったときに、事実確認やその後の対応まで行える仕組みにしておく必要があります。

2. 「厳しい指導」のつもりでも、パワハラになることがある

今回の第三者調査報告書では、問題が生じた背景の一つとして、「厳しい指導」との誤解が指摘されています。

会社でも、「本人のためを思って言っている」「仕事なのだから、この程度は当然だ」と考えることはあるかもしれません。しかし、目的が正しければ、どのような言い方でも許されるわけではありません。

法律上、職場のパワーハラスメントは、次の3つをすべて満たすものとされています。

  • 優越的な関係を背景とした言動であること
  • 業務上必要かつ相当な範囲を超えたものであること
  • 労働者の就業環境が害されるものであること

裏を返せば、業務上必要かつ相当な範囲で行われる指示や指導は、これに当たりません。必要な注意や指導まで控える必要はない、ということです。

大切なのは、仕事上の問題を指摘しているのか、それとも相手の人格そのものを攻撃しているのかを分けることです。

「この部分が間違っているので、次回からここを確認してください」と具体的に改善を求めることと、「こんなこともできないのか」「本当に使えない」と本人を否定することは別です。

3. 人事権や評価権の使い方にも注意が必要

今回の報告書では、人事権を背景として職員を心理的に圧迫する行為についても問題とされています。

会社でも、人事異動や人事評価は組織運営に必要なものです。しかし、「逆らったら異動させる」「意見を言えば評価を下げる」といった形で、社員を従わせるための道具として使われれば問題になります。

人事異動や評価については、「なぜこの判断なのか」を会社として客観的に説明できるかという視点も大切です。

4. 自社で確認しておきたい4つのこと

今回の事例を参考に、次の点を確認してみてください。

① 注意や指導が、人格への攻撃になっていないか

仕事上の問題と、本人そのものへの否定を分けているでしょうか。

② 人事異動や評価を、社員を従わせるために使っていないか

人事上の判断について、客観的な理由を説明できるでしょうか。

③ 相談を受けた後の手順が決まっているか

誰が事情を聞き、誰が事実確認を行い、誰が対応を決めるのかまで決まっているでしょうか。

④ 社長や役員が当事者でも制度が機能するか

一般社員には対応できても、経営者が当事者になった途端に誰も動けない仕組みになっていないでしょうか。今回の横浜市の報告書でも、市長本人の言動だけでなく、その背景として組織体制の不備が指摘されています。

5. 大切なのは「厳しく言わないこと」ではない

ハラスメント対策というと、「それでは部下を注意できなくなるのでは」と心配されることがあります。しかし、必要な指導までやめる必要はありません。

大切なのは、次の3点です。

  • 必要な指導と、人格攻撃を分けること
  • 業務上必要な権限の行使と、権限を使った威圧を分けること
  • 問題が起きたときに、実際に動ける仕組みを作っておくこと

今回の事例をきっかけに、一度、自社のハラスメント対策が「制度としてある」だけでなく、実際に機能するものになっているか確認してみてはいかがでしょうか。

ハラスメント防止規程の整備は就業規則の作成・見直しで、相談体制や運用の点検は労務リスク点検パックでお手伝いしています。日々の「この言い方は大丈夫だろうか」というご相談は、労務顧問として継続的にお受けしています。初回のご相談は無料・予約制です。お気軽にお問い合わせください

参考資料

※本記事は令和8年8月15日時点の情報をもとにした一般的な説明です。実際の取扱いは個別の事情によって異なりますので、判断に迷われる場合は当事務所、または所轄の都道府県労働局にご相談ください。

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