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災害のときの年次有給休暇―会社から「有休を使って」と言えるのか

デスクに置かれた卓上カレンダーとペン立て

先日の記事「地震で会社が休業したら―災害時に雇用を守るために知っておきたい制度」では、災害で会社が休業したときの休業手当や解雇の取扱いをご紹介しました。

今回はその続編として、年次有給休暇(有休)だけに絞ってお伝えします。

災害のときには、「しばらく仕事にならないから、有休を使ってもらおう」、反対に「復旧で人手が足りないのに有休を申請された」といった場面が起こりがちです。厚生労働省が令和8年8月7日に公表したQ&Aでも、この点が取り上げられています。

1. 会社から「有休を使って」と命じることはできません

年次有給休暇は、労働者が請求する時季に与えなければならないとされています(労働基準法第39条第5項本文)。会社に命じられて取得するものではありません。

災害で仕事が減ったとき、「休業手当を支払うよりも有休で処理したい」と考えたくなるかもしれません。しかし、会社が一方的に有休の取得を命じることはできません。

労働基準法には、有休について次の2つの仕組みもあります。

  • 労働者が請求した時季に与えることが事業の正常な運営を妨げる場合に、他の時季に変更できる(第39条第5項ただし書)
  • 5日を超える分について、労使協定によって計画的に付与できる(第39条第6項)

ただし厚生労働省のQ&Aは、これらの仕組みは会社が一方的に有休の取得を命じることができると定めたものではないと、はっきり述べています。

2. 休業させる日に有休を充てることもできません

会社の都合で休業とした日は、そもそも働く義務がなくなっている日です。働く義務のない日について、有休を取得することはできません。

したがって、「休業手当の負担を軽くするために、休業日を有休扱いにする」という処理はできません。従業員本人が有休の取得を希望する場合は、休業とすることを決める前に申し出てもらう必要があります。

なお、この点は今回のQ&Aに直接書かれているものではありません。有休が「働く義務のある日」について認められる制度であることからくる、一般的な考え方です。

3. 復旧で忙しいとき、有休の日をずらしてもらえるか

反対に、災害復旧の対応で人手が必要なときに、有休を請求されることもあります。

このときに使えるのが時季変更権です。労働者が請求した時季に有休を与えることが「事業の正常な運営を妨げる」場合には、会社は他の時季に与えることができます(労働基準法第39条第5項ただし書)。

厚生労働省のQ&Aも、災害復旧の業務等への対応にあたって、請求された時季に有休を与えることが事業の正常な運営を妨げる状況にある場合には、他の時期に与えることができる、としています。

「事業の正常な運営を妨げる」かどうかは、客観的に判断します

ただし、「忙しいから」というだけで自由に変更できるわけではありません。Q&Aでは、次のような事情を考慮して客観的に判断すべきとされています。

  • 事業場の規模、事業の内容
  • その従業員が担当する作業の内容や性質
  • 作業が忙しい時期かどうか
  • 代わりに対応できる人を配置することの難しさ
  • これまでの労働慣行 など

判断はその従業員が所属する事業場を基準に、災害後の状況も踏まえて個別に行われます。「人が足りないので一律にお断りする」という運用は、後々のトラブルにつながりかねません。変更をお願いするときは、理由を具体的に説明し、いつなら取得できるかもあわせて伝えることをおすすめします。

4. 年5日の取得義務は、災害のときも続きます

年10日以上の有休が付与される従業員については、会社が年5日を確実に取得させる義務があります(労働基準法第39条第7項)。

今回のQ&Aでは、この年5日の義務について特に触れられていません。義務が免除されるという特別な定めも設けられていませんので、災害のときであっても、年度内の取得状況の管理は続ける必要があります。

なお、会社が取得時季を指定するときは、あらかじめ従業員の意見を聴き、その意見を尊重するよう努めることとされています。ここでも「会社が一方的に決める」ことは想定されていません。

年5日の取得義務については、年次有給休暇の「年5日取得義務」、対応できていますか?でも詳しくご説明しています。

まとめ

  • 有休は従業員が請求する時季に与えるもので、会社が取得を命じることはできません
  • 会社の都合で休業とした日に、有休を充てることはできません
  • 災害復旧で「事業の正常な運営を妨げる」場合は、時季変更権で他の時季に変更できます
  • 変更できるかどうかは、作業の性質や代わりの人を配置できるかなどを客観的に見て判断します
  • 年5日の取得義務は、災害のときも続きます

災害のときは、会社も従業員も余裕がなくなります。だからこそ、有休の取扱いのように「決まりがはっきりしていること」は、あらかじめ整理しておくと迷わずに済みます。
労務顧問として、こうしたご相談も日常的にお受けしています。ご不安な点がありましたら、お気軽にご相談ください

参考資料

※本記事は令和8年8月7日時点の情報をもとにした一般的な説明です。実際の取扱いは個別の事情によって異なりますので、判断に迷われる場合は当事務所、または所轄の労働基準監督署にご相談ください。

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