長期欠勤したら自動的に休職? そもそも休職とは何か

「体調を崩した従業員が、もう1か月も休んでいる。これはもう休職扱いでいいのかな」
「休職って、法律で決まっている制度じゃないの?」
「そういえば、うちの就業規則には休職のことが何と書いてあったかな」
従業員が病気やけがで長く休むことになったとき、多くの会社で使われるのが「休職」です。
ところが、休職は身近な言葉である一方で、「いつから休職なのか」「欠勤と何が違うのか」があいまいなまま運用されていることが少なくありません。
このブログでは、会社の立場から休職の基本と実務対応を全7回で整理していきます。第1回の今回は、出発点として「そもそも休職とは何か」を確認します。
1.休職は、法律で決まった制度ではありません
休職とは、一般に、病気やけがなどの事情で従業員が一定期間働けない場合に、雇用関係を維持したまま、一定期間、働く義務を免除する制度です。
ここで押さえておきたいのは、休職は法律で「設けなさい」と決められた制度ではないということです。
労働基準法などには、休職の期間や条件についての定めはありません。休職制度を設けるかどうか、どのようなときに休職とするのか、期間をどのくらいにするのかは、それぞれの会社が決めることになります。
そのため、休職のルールは、通常は会社の就業規則に書かれています。休職制度のように従業員全員に適用されるルールを設ける場合は、就業規則に記載しなければなりません(労働基準法第89条第10号)。
なお、産前産後休業や育児休業、仕事中のけがによる休業(労災)などは、法律に基づく別の制度です。このシリーズでは、仕事以外の病気やけが(いわゆる「私傷病」)で働けなくなった場合の休職を中心に取り上げます。心の不調による休職もここに含まれます。
2.「欠勤」と「休職」は何が違う?
欠勤と休職は、どちらも「従業員が仕事を休んでいる」という点では同じに見えます。しかし、会社と従業員の約束の上では、意味が異なります。
欠勤
本来は働く日なのに、従業員の事情で休んでいる状態です。従業員には働く義務が残っていて、それを果たせていない、という状態になります。
休職
就業規則などのルールに基づいて、働く義務が免除されている状態です。欠勤とは違い、休んでいても、働く約束を果たしていないことにはなりません。
つまり、休んでいる日数が長くなったからといって、欠勤がそのまま休職に変わるわけではありません。欠勤と休職の間には、「休職に切り替える」という区切りが必要になります。
3.休職制度は何のためにあるのか
病気などで長く働けない状態が続くと、本来であれば、雇用を続けることが難しいという判断にもつながりかねません。
休職制度は、そうした場合でもすぐに雇用関係を終わらせるのではなく、一定の期間、治療に専念してもらい、回復を待つための仕組みです。一般に「解雇を一定期間猶予する制度」と説明されます。
- 従業員にとって:仕事を失う心配を少なくして、治療に専念できる
- 会社にとって:経験を積んだ人材を失わずにすむ可能性がある。また、どこまで待つのかという目安をあらかじめ決めておける
このように、休職制度は従業員を守るだけでなく、会社が判断に迷わないための「ものさし」としての役割もあります。
4.休職はいつから始まるのか
では、休職はいつから始まるのでしょうか。
これは、会社の就業規則などでどのように定められているかによって異なります。例えば、次のような2つの方式があります。
① 一定の条件を満たすと休職となる方式
(例)私傷病による欠勤が30日間継続し、なお勤務できない場合は、翌日から休職とする。
このように定められていれば、原則として、規定の条件を満たした時点で、会社が改めて命じなくても休職となります。この例では、欠勤が30日間続いた翌日が休職の開始日です。
② 会社が休職を命じる方式
(例)私傷病による欠勤が30日間継続し、なお勤務できない場合は、会社は休職を命じることがある。
この場合、欠勤が30日間続いただけで自動的に休職となるわけではありません。会社による休職命令が必要です。
このように、同じ休職制度でも、就業規則の定め方によって休職開始日の考え方は異なります。休職に入るときの具体的な進め方は、第2回で詳しくご説明します。
5.あいまいな運用で起こりやすいこと
休職の始まりをはっきりさせないまま運用していると、たとえば次のような問題が起こりやすくなります。
- 休職期間がいつ終わるのか分からない
→開始日があいまいだと、満了日もあいまいになります。期間満了の扱い(第6回で取り上げます)で、会社と従業員の認識が食い違うおそれがあります。 - 人によって扱いが違ってしまう
→「前の人は3か月で戻ってもらったが、今回は1年待った」といった違いは、従業員から見て不公平と受け取られることがあります。 - 就業規則と違う約束をしてしまう
→「治るまでいつまでも待つよ」と口頭で伝えてしまい、就業規則の休職期間との関係が分からなくなる、というケースです。
休職は、従業員が体調を崩してつらい時期に関わる制度です。だからこそ、会社がルールに沿って落ち着いて対応できるようにしておくことが、従業員にとっても安心につながります。
6.まずは自社の就業規則を確認してみましょう
第1回の締めくくりとして、自社の就業規則で次の3点を確認してみてください。
- 休職についての規定があるか
- 休職はどのように始まるか(条件を満たすと休職となるのか、会社が命じるのか)
- 休職期間はどのくらいか
規定の内容を詳しく点検するポイントは、最終回の第7回でまとめてご紹介します。
次回の第2回では、従業員が病気で働けなくなったときに、会社が最初に何をすればよいか(診断書の確認、欠勤中の扱い、休職開始の判断と通知)を整理します。
休職シリーズ(全7回)
- 第1回 長期欠勤したら自動的に休職? そもそも休職とは何か(この記事)
- 第2回 従業員が病気で働けなくなったら? 会社が最初にすべきこと
- 第3回 休職中の給与・社会保険料・傷病手当金はどうなる?
- 第4回 休職中の従業員に、会社はどこまで連絡してよい?
- 第5回 「復職できます」という診断書が出たら、会社は復職させなければならない?
- 第6回 休職期間が満了したら自動的に退職? 会社が注意すべきこと
- 第7回 あなたの会社の休職規程は大丈夫? 確認したい7つのポイント
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※本記事は令和8年10月20日時点の情報をもとにした一般的な説明です。実際の取扱いは就業規則の内容や個別の事情によって異なりますので、判断に迷われる場合は当事務所にご相談ください。










