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従業員と突然連絡が取れなくなったら?会社が確認すべきことと退職の進め方

机の上の黒い固定電話と書類

「従業員が突然出勤しなくなった」

「電話をしても出ない。メールにも返信がない」

「何日も連絡が取れない。もう退職として処理してよいのだろうか?」

従業員が突然出勤しなくなり、本人とも連絡が取れなくなることがあります。

このような場合、会社として困るのが、「どこまで本人の状況を確認すればよいのか」、そして「いつまで待てば退職などの処理を進められるのか」という問題です。

今回は、従業員と突然連絡が取れなくなった場合に、会社がどのように対応すればよいのかを整理します。

1.まずは「なぜ連絡が取れないのか」から考える

無断欠勤で連絡が取れない場合、「仕事が嫌になって、そのまま来なくなったのだろう」と思ってしまうかもしれません。でも、ちょっと待ってください。

本当は次のような理由かもしれません。

  • 自宅で倒れている
  • 急な病気で入院している
  • 交通事故に遭っている

他には、本人が逮捕・勾留されているため、会社と連絡を取れないというケースもありえます。

なお、「逮捕された=本人が犯罪を行った」と直ちに判断できるわけではありません。逮捕された従業員の欠勤や懲戒処分をどう扱うかは別の論点になりますので、これは別の機会に整理します。

ここで大切なのは、「連絡が取れない」という事実だけでは、本当に退職する意思があるとは限らないということです。

そのため、まずは本人の状況を確認するところから始めましょう。

2.本人へ複数の方法で連絡する

まず、本人への連絡を試みます。

  • 電話
  • メール
  • SMS
  • 会社で使用しているチャットツール

など、通常利用している連絡方法が複数ある場合には、複数の方法で連絡を取ってください。

そして重要なのが、「いつ、どのような方法で連絡したのか」を記録しておくことです。

例えば、「○月○日10時 本人携帯へ電話。不通」「○月○日15時 メール送信。返信なし」といった簡単な記録で構いません。

後になって退職や解雇などを検討する場合にも、会社がどのような確認を行ったのかを説明できるようにしておきます。

3.緊急連絡先にも確認する

本人への連絡が取れない状態が続く場合には、会社に届け出られている緊急連絡先への確認も行います。

たとえば、「○○さんが出勤されておらず、ご本人とも連絡が取れないため、安否確認のためご連絡しました」といった形です。

ひょっとしたら、急な病気での入院や、交通事故の情報が入っているかもしれません。

4.会社は本人の自宅まで行かなければならない?

電話やメール、緊急連絡先でも連絡が取れない場合、次の対応として、実務書などでは「本人の自宅を訪問して安否を確認する」という方法がよく紹介されます。

確かに、自宅訪問して安否確認ができるのであればそれが望ましいですが、遠方のリモートワークの労働者のケースなど、自宅訪問が難しいケースもあるでしょう。

しかし、次のようなケースでは自宅訪問も含めて、積極的に安否確認を行うことが望ましいと考えます。

安否が特に心配される場合

「持病があって治療中だった」「直前に体調不良を訴えていた」といった、本人の身に何か起きている可能性が高いと考えられる場合です。

この場合は、自宅訪問のほか、警察への相談も含めて、できるだけ安否を確認したほうが望ましいです。ちなみに、警察への行方不明者届は、家族だけではなく、雇用主も届け出ができます。

5.本人の住所へ書面を送る

電話・メール、緊急連絡先などでも連絡が取れない場合、本人の住所へ書面を送ります。

書面には、

  • いつから欠勤が続いているのか
  • 会社から連絡しているが応答がないこと
  • 指定した期日までに会社へ連絡してほしいこと
  • 出勤できない事情がある場合には申し出てほしいこと
  • 連絡がない場合には就業規則等に基づく対応を検討すること

などを記載します。

「記録が残る郵便」で送る

会社としては、「いつ、どのような内容の書面を送ったのか、相手が受け取ったことが記録できる方法」、例えば内容証明郵便などで送ります。会社として、本人に連絡を取ったことの記録を残し、次の手続きに進めるためです。

ただし、内容証明郵便は受け取りのサインが必要なため、本人が不在のまま受け取らないと、郵便局で一定期間保管された後に会社へ返送されてしまいます。

そのため、内容証明郵便と同時に、ポストに投函されたことが記録され、受け取りのサインが必要ない「特定記録郵便」でも同一の書面を送り、本人の住所に届いたという事実を示せるようにしておくとよいでしょう。

送った書面のコピーや送付の記録などは会社で保管しておきます。

6.それでも連絡が取れない。労働契約をどう終了させるか?

ここまでやっても連絡がつかない場合、ここで、労働契約をどう終了させるかという問題になります。

では「解雇」か?と思うかもしれませんが、その前に就業規則に次の項目がないか確認してみてください。

就業規則には、「従業員が行方不明となり、会社との連絡が一定期間取れない場合」などについて、自然退職とする規定が設けられていることがあります。

自然退職とは、本人や会社が退職や解雇の意思表示をしなくても、就業規則の定めにより自動的に労働契約が終了する扱いのことです。

例えば、「行方不明となり14日以上連絡がとれないとき」といった規定です。

この規定があれば、この条件を満たせば就業規則による自然退職として手続きを検討できます。

ただし、こういった規定を適用しようとする際に、本当に「行方不明」といえる状況なのか、は注意です。

過去の裁判例では、就業規則に「行方不明となり14日以上連絡がとれないとき」を退職事由とする規定があった会社について、従業員は出勤しなくなった後もFAXやメールで会社へ連絡していた、そのため、会社から本人へ連絡する手段が全くなくなったとはいえず、就業規則上の「行方不明」には当たらないとして、自然退職が否定された(退職と認めなかった)という事案がありました(O・S・I事件・東京地方裁判所令和2年2月4日判決)。

「行方不明」とは、単に出勤していないというだけではなく、会社が通常の手段では本人に出勤命令や解雇などの通知・意思表示をすることができない状態を意味すると裁判所は判断しています。

7.会社の対応まとめ

ここまでの内容を、会社の判断の流れとして整理します。

自然退職として処理できるかを考える

① 本人への電話・メール、緊急連絡先への確認、書面の送付など、通常考えられる方法で連絡を試み、その経過を記録する

↓

② 就業規則に、連絡が取れない場合の自然退職の規定があるか確認する

↓

③ 規定が定める期間、本当に「連絡が取れない」状態が続いているか確認する

↓

④ 要件を満たしていれば、自然退職規定の適用を検討する

自然退職として処理できない、または慎重に判断すべきケース

  • そもそも就業規則に自然退職の規定がない
    →規定がない場合、当然に自然退職として処理することはできません。
  • 就業規則で定めた期間がまだ経過していない
    →「○日間連絡が取れない場合」と規定しているのであれば、まずその日数を満たしているかを確認します。
  • 本人からメールなどで連絡が来ている
    →会社からの電話に出なくても、本人との間に別の連絡手段が残っている場合には、「連絡不能」「行方不明」という規定の要件を満たさない可能性があります。先ほど紹介した裁判例がまさにこのケースです。

自然退職として処理できない場合はどうする?

自然退職として処理できない場合には、まだ本人との労働契約が続いていることを前提として、今後の対応を検討します。

  • 無断欠勤を続けていることが「黙示の退職の意思表示」とみなせないか?
    →個別に対応を検討します。
  • 解雇できるか?
    →解雇は、解雇理由の合理性・相当性(労働契約法第16条)、解雇予告(労働基準法第20条)、解雇の意思表示の問題など、多くの別の問題が生じます。慎重に対応を検討することになります。

8.平時に就業規則や社内対応を見直しておきましょう

従業員と突然連絡が取れなくなるケースについて、就業規則作成時は想定しておらず、実際に発生してから、「就業規則に規定がない」「自然退職の条件が曖昧だった」と気づくケースがよくあります。

平時から、次の点は確認しておきましょう。

  • 無断欠勤・行方不明・音信不通の場合の社内での取扱いが定められているか
  • 自然退職となる条件が就業規則で定められているか

また、会社によっては、厚生労働省などが公表している「モデル就業規則」のひな形をそのまま使っていることもあります。ひな形の中には、連絡が取れない場合の自然退職の規定が置かれていないケースもあり、その場合は今回のようなケースを自然退職として処理することができません。

就業規則作成時は、ひな形をそのまま使うのではなく、こういったケースが起こることも想定して、裁判例も踏まえたトラブル発生に備えた条項を作成しておく、また、作成後も定期的に見直して整備しておくことをお勧めします。

就業規則の見直しや、対応にお困りのときは

「自社の就業規則に自然退職の規定があるか分からない」「今まさに連絡が取れない従業員がいて、どう進めればよいか迷っている」といったご相談は、当事務所でお受けしています。

就業規則の条項の整備は就業規則の作成・見直しで、実際に起きたときの進め方のご相談は労務顧問として継続的にお手伝いしています。初回のご相談は無料・予約制です。お気軽にお問い合わせください。

※本記事は令和8年9月22日時点の情報をもとにした一般的な説明です。実際の取扱いは就業規則の内容や個別の事情によって異なりますので、判断に迷われる場合は当事務所にご相談ください。

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